久しぶりにレンタカーに乗った。
久しぶりに遊ぶ友達が、レンタカーをしてくれると言う。私が車出すよと言っても聞かない。どうやら「40%オフでレンタルできる車を見つけた!」とのこと。
正直気が乗らなかった。ボロボロのヴィッツとか、旧型マーチらへんと思ったからだ。
しかし彼が乗ってきたのは黒光りするセダン。
トヨタのプレミオという車だった。
実際に乗ったヤツ
こんなピカピカのが来ると思ってなかったので正直テンションが上がる。
そもそもセダンに乗るのがめちゃくちゃ久しぶりで、思い返せば小学生の頃おじいちゃんの乗ってたベンツくらいで、当時その車へ抱いた感想というのはベンツのエンブレムを折って持って帰りたいくらいのものだった。折ろうとしたら怒られた。
なにより、
「5ナンバーのごく普通のセダン」
という「普通感」がたまらなく嬉しい。どちらかと言えばベーシックカーが好みな私にとって、日本人の解釈する5ナンバーのごく普通のセダンの最新型に乗れるのは想像以上の喜びだった。5ナンバーのベーシックセダン…なんていい響き…
しかもトヨタ!タクシー以外のトヨタ車に乗った経験は教習車だけである絶滅危惧種のような私は、トヨタのセダンというだけで自分でも驚くほどにワクワクしていた。と、同時に小恥ずかしい自分もいた。
トヨタ童貞を急に捨てるには心の準備ができてなかった。
ベロンベロンに酔って服のはだけたお姉さんを目の前にした童貞と同じ顔をしていた。
突然訪れた童貞卒業のチャンスに吃ってしまった。
このプレミオという車はアリオンという姉妹車がいて、それぞれコロナとカリーナの後継車という位置関係らしい。
2001年からプレミオを名乗るようだが、本当にこの名前には先見の明あったと思う。2020年には悪名の限りを尽くす別の「新型コロナ」が待っているから…過去最大級の風評被害が待っていたのだろう…
ちなみに私はコロナよりハイネケンの方が好きだ。
乗り込むとイメージの中のセダンそのものだった。
惹き付けるエクステリアでもないし、運転していて胸のすくような感覚もない。でも、安心して気持ちよく乗れる。
安価な車と思えないほどの静寂性、まずまず良い座り心地のシート、突き上げの少ないサスペンション、足元に余裕のある後席、後席乗員の顔を隠すCピラー、ちゃんと荷物の乗るトランク。これはセダンだ。この車格と価格で実現できるんだ。
快適に移動する為の道具の理想系の一つがセダンなんだなぁ…としみじみ感動した。
おそらく、人気のない車種だから安くで借りれたんだろうし、ジジくさい見た目は女の子ウケもよくはなさそう。
趣味車にしても地味すぎる。
でも、この乗り心地には間違いなく説得力があって、セダンどころか車から離れている我々世代こそ注目すべき道具がセダンだと確信した!
目を三角にしてトバすものでも峠を攻めるものでもないこの移動の手段は清涼で丁寧なものだ。巷に溢れるSUVや軽自動車を悪く言うつもりもないが、今の流行りのせいで消えゆく運命が目に見えて明らかなセダンという車種こそが車のキホンと言われる所以に触れられたことは大変喜ばしい。
とても良い経験でした。
ただの移動に車の積み重ねられた歴史全体の匂いを感じられるプレミオ、手放しで褒めすぎだけど、素敵ですね。